Tangem Walletで複数アカウントを作成する方法
仮想通貨をもっとシンプルに整理したいと思ったことはありませんか?Tangemでは、その願いを叶える新機能「Multi-Accounts(マルチアカウント)」をリリースしました。ひとつのTangem Wallet内で最大20個まで独立したアカウントを作成できます。仮想通貨管理がさらに快適になる仕組みをご紹介します。
Multi-Accountsとは?
Multi-Accountsは、Tangem Walletを複数の独立したアカウントに分けて管理できる機能です。各アカウントは、それぞれ独立して動作し、対応ネットワークごとに専用の公開アドレス・取引履歴・残高を持ちます。それでも、すべてのアカウントはひとつのウォレットとバックアップシステムで統合されているため、複数のリカバリー手段を個別に管理する必要はありません。
新しいアカウントの作成方法
すでにTangemをご利用の方は、アプリのアップデートでMulti-Accounts機能が利用可能になります。新規ユーザーは、初回セットアップ時からこの機能を使えます。
新しいアカウントを作成する手順:
- ウォレットを開き、右上の三点アイコンをタップ
- リストからウォレットを選択
- Add account をタップし、アカウント名・カラー・アイコンを設定
- アカウントの並び替えは、 Wallet Settings からドラッグ&ドロップで可能です。
メイン画面では、アカウントの折りたたみ・展開ができ、全アカウントの合計残高も一目で確認できます。
スマートなアカウント管理
アカウント上限が20個のため、アカウントのライフサイクル管理が重要です。アーカイブ機能を活用することで、使わないアカウントを整理できます。アカウントをアーカイブすると、以下のような変化があります。
保持されるもの:
- すべての残高
- すべてのアドレス
- 完全な取引履歴
- アカウントに紐付くカスタムトークン
変化するもの:
- アカウントがメイン画面から非表示になる
- 合計残高の計算から除外される
- アクティブアカウント枠がひとつ空く
重要なのは、アーカイブしてもデータは削除されないことです。アーカイブしたアカウントに資産がある場合も、そのまま安全に保持されます。単に画面上の表示を減らし、20個のアクティブ枠を有効活用できるようにする仕組みです。
アカウントをアーカイブする方法
アカウントをアーカイブする手順:
- ウォレットを開き、右上の三点アイコンをタップ
- リストからウォレットを選択
- アカウントを選び、Archive accountをタップ
Important: アカウントは削除されません。残高・アドレス・トークン・取引履歴はすべて保持され、資産が残っていても安全です。アーカイブしたアカウントはメイン画面から非表示になり、合計残高から除外されます。いつでも復元可能です。なお、Main accountはアーカイブできません。
アーカイブしたアカウントの復元方法
アーカイブしたアカウントを復元するには:
- ウォレットを開き、右上の三点アイコンをタップ
- リストからウォレットを選択
- Archived accounts をタップし、復元したいアカウントの横にある Recover をタップ
Important: すでに20個のアクティブアカウントがある場合、アーカイブしたアカウントは復元できません。復元するには、未使用のアカウントをアーカイブして枠を空けてください。
リカバリーと互換性
TangemはBIP-32/39/44/84の標準に準拠しているため、すべてのアカウントは互換性のある他のウォレットソフトウェアでも復元できます。Tangemでシードフレーズを設定していれば、他のウォレットにそのフレーズをインポートし、同じ導出パスにアクセス可能です。
これは本当のセルフカストディ(自己管理)に不可欠な機能です。資産はTangem独自の仕組みに縛られることなく、暗号標準により、どの企業や製品に何かあっても資産へアクセスし続けられます。
すべてのアカウントで同じ機能が利用可能
すべてのアカウントで以下の操作が可能です:
- 資産の送受信
- 仮想通貨の購入・売却
- トークンのスワップ
- Swap & Sendトランザクションの実行
- WalletConnect経由でDAppsに接続
- ステーキングへの参加
- イールド機会へのアクセス
唯一の制限はリファラルプログラムで、ウォレットごとに1アカウントのみ参加可能です。これは不正防止の観点から合理的で、ほとんどのユーザーに影響はありません。
ネットワーク対応状況
ほぼすべての対応ネットワークで、すべてのアカウントを利用できます。唯一の例外はChiaで、技術的制約によりMain accountのみ対応となります。Ethereum、Bitcoin、Solanaなど主要ネットワークの資産管理には影響しません。
カスタムトークンの追加
カスタムトークンを追加する際、ウォレットは既存アカウントの導出パスと照合します:
- パスが既存アカウントと一致する場合、そのアカウントに自動で表示されます
- 一致しない場合は、Main accountに追加されます
- 後から一致するパスのアカウントを作成した場合、トークンは自動的に新しいアカウントへ移動します
この仕組みにより、トークンは常に適切なアカウントで管理され、手動で移動する必要がありません。
Multi-Accountsの技術的背景
Tangem Walletをセットアップすると、Bitcoin Improvement Proposal 32(BIP-32)で定義された階層型決定性(HD)ウォレットが作成されます。この仕組みでは、ひとつのマスターシードから何十億もの暗号鍵を生成できるのが大きな利点です。
Tangemデバイスは、シード(セキュアチップで生成またはシードフレーズでインポート)から導出されたマスタープライベートキーを保持します。このマスターキーから、ウォレットは数学的に多数の子鍵を導出できます。それぞれの子鍵は、独立した乱数生成器で作成した場合と同等の暗号強度を持ちます。
この仕組みは、HMAC-SHA512という一方向の暗号関数で実現されています。新しい鍵を生成する際は、親鍵・チェーンコード(256ビットの追加エントロピー)・インデックス番号を組み合わせて新しい512ビット値を作り、前半256ビットが子プライベートキー、後半256ビットが子の新しいチェーンコードとなります。
これは決定的(デターミニスティック)な仕組みで、同じ入力なら毎回同じ結果が得られます。そのため、シードフレーズだけで全ウォレットを復元できるのです。計算で常に同じ順序・同じ鍵が再現されます。
ツリー構造と導出パス
HDウォレットは、鍵をツリー状の階層で管理します。各位置は「導出パス」で表され、たとえば m/44'/60'/0'/0/0 のような構造です:
m / purpose' / coin_type' / account' / change / address_index
各要素の意味:
- m — マスターキー(ツリーの根)
- purpose' — 適用する標準(44はBIP-44、84はBIP-84のSegWit)
- coin_type' — 仮想通貨の種類(0はBitcoin、60はEthereumなど)
- account' — 同じ通貨内のアカウント区分
- change — 受取用アドレス(0)とお釣り用アドレス(1)の区別
- address_index — アカウント内の個別アドレス
アポストロフィ(')は「ハードンド導出」を示し、子鍵から親鍵を逆算できないようにする重要なセキュリティ機能です。ツリー上位の安全性を高めます。
Tangemにおける複数アカウントの実装
TangemのMulti-Accountsは、この階層構造を活用しつつ、EVM系と非EVM系ネットワークで導出パスの扱いが異なります。
EVMネットワーク(Ethereum、Polygon、Arbitrum、BSCなど)の場合:
EVM系はアカウントベース型で、各アカウントは通常ひとつのアドレスを持ちます。Tangemではaddress_index(最後のインデックス)を増やして新しいアカウントを作成します:
Account 1: m/44'/60'/0'/0/0
Account 2: m/44'/60'/0'/0/1
Account 3: m/44'/60'/0'/0/2
...
Account 20: m/44'/60'/0'/0/19この方式は、アカウントごとに1つのメインアドレスだけ必要なEVM系ブロックチェーンに最適です。パス中の60はEthereumのSLIP-44登録コインタイプ番号です。独自コインタイプを持たないEVM互換ネットワークもこの構造を使います(第2世代Tangem Walletのみ)。
一部のEVM互換ネットワークはEthereumのコインタイプではなく独自の番号を使います。Quaiは994、Ethereum Classicは61、XDCは550です。Wallet 1.0初期バッチのEVM互換ネットワークも独自コインタイプを採用しています。
これらのネットワークでは、アカウントはEVM共通構造ではなく、パスの3番目に位置します:
Quai:
Account 1: m/44'/994'/0'/0/0
Account 2: m/44'/994'/1'/0/0
Account 3: m/44'/994'/2'/0/0
Ethereum Classic:
Account 1: m/44'/61'/0'/0/0
Account 2: m/44'/61'/1'/0/0
Account 3: m/44'/61'/2'/0/0
XDC:
Account 1: m/44'/550'/0'/0/0
Account 2: m/44'/550'/1'/0/0
Account 3: m/44'/550'/2'/0/0非EVMネットワーク(Bitcoin、Litecoinなど)の場合:
BitcoinなどのUTXO型ネットワークでは、取引ごとに新しいアドレスが必要になるため、アカウントごとに複数のアドレスを持ちます。Tangemでは導出パスの3番目(account index)を増やしてアカウントを分けます:
Account 1: m/84'/0'/0'/0/0
Account 2: m/84'/0'/1'/0/0
Account 3: m/84'/0'/2'/0/0
...
Account 20: m/84'/19'/0'/084はBIP-84(SegWitアドレス、bc1形式)を示し、0はBitcoinのコインタイプです。アカウントインデックスを増やすことで、各アカウントが独立した鍵ツリーを持ち、その中で無制限にアドレスを生成できます。