ブロックチェーンの処理速度を測る「TPS」とは?
主要な洞察
本記事では、ブロックチェーンの処理速度やスケーラビリティを測る重要な指標であるTPS(1秒あたりのトランザクション数)について解説します。TPSが高いほど多くのユーザーを同時に処理でき、混雑を回避しやすくなります。主要なブロックチェーンのTPS比較や、速度・セキュリティ・分散性のトレードオフ、Ethereum 2.0などによるスケーラビリティ向上の取り組みも紹介。高いTPSを他のネットワーク特性と両立させることが、ブロックチェーン開発者にとって重要な課題となっています。
トランザクションは、すべてのブロックチェーンで基本となる活動単位です。価値の移転、スマートコントラクトの実行、分散型アプリケーション(dApp)とのやり取りなど、すべてが記録されたトランザクションとなります。これらのトランザクションをネットワークがどれだけ速く処理できるかは、使いやすさやスケーラビリティ、ユーザー体験に直結します。ブロックチェーンの性能を測る主な指標のひとつが「1秒あたりのトランザクション数(TPS)」です。TPSは、1秒間にネットワークが検証し台帳に追加できるトランザクション数を示します。TPSが高いほど、同時に多くのユーザーをサポートでき、混雑時の対応力も高くなります。
ブロックチェーンにおけるTPSとは?
TPS(1秒あたりのトランザクション数)は、ネットワーク帯域とも呼ばれ、ブロックチェーンの処理能力を表す重要な指標です。通常時・ピーク時のどちらでも、ネットワークがどれだけ速く、どれだけスケールできるかを把握するために使われます。
多くのブロックチェーンには、
- 平均TPS(通常時の標準的な処理速度)
- 最大TPS(トラフィック急増時に理論上処理できる最大値)
などが設定されています。市場の急変動などでトランザクションが急増すると、ブロックチェーンが需要に追いつけない場合、ネットワークが混雑し、承認の遅延や手数料の高騰が発生します。
TPSとブロックタイムの違い
TPSだけでは、ブロックチェーンの速度を完全には表せません。もうひとつ重要なのが「ブロックタイム(ブロック生成時間)」です。これは新しいブロックが作成・承認されるまでの平均時間を指します。
- TPSは「1秒間に何件のトランザクションを処理できるか」を示します。
- ブロックタイムは「トランザクションがどれだけ早く承認されるか」を示します。
TPSが高くてもブロックタイムが長い、あるいはブロックタイムが短くてもTPSが低い場合もあります。実際のパフォーマンスは、このバランスによって決まります。
ブロックチェーンのTPSを計算する方法
ブロックチェーンのTPSを概算するには、以下の3つの要素が必要です。
- 平均ブロックタイム
- ブロックサイズ
- 平均トランザクションサイズ
おおまかな計算式は次の通りです。
TPS = (ブロックサイズ ÷ 平均トランザクションサイズ) ÷ ブロックタイム
TPS計算例
例えば、
- ブロックサイズ = 2MB
- 平均トランザクションサイズ = 1kB
- ブロックタイム = 40秒
この場合、TPS = (2MB ÷ 1kB) ÷ 40 = 約50 TPS となります。
この値はあくまで目安であり、ネットワークのオーバーヘッドやトランザクションの複雑さなど、実際の要因によって変動します。
主要ブロックチェーンのTPS比較
コンセンサスメカニズムやネットワーク構造の違いにより、トランザクション処理能力はチェーンごとに大きく異なります。
- Bitcoinは約7 TPS
- Ethereumは平均15 TPS
- 新しいブロックチェーンはさらに高いスループットを実現
平均TPSが高いブロックチェーン
Blockchain | Average TPS | Block Time |
Solana (SOL) | 最大60,000 | 5〜12秒 |
Fantom (FTM) | 最大10,000 | 約1秒 |
Cosmos (ATOM) | 約10,000 | 1〜2秒 |
Polygon (MATIC) | 最大7,000 | 最大5分 |
Algorand (ALGO) | 約6,000 | 約5秒 |
Avalanche (AVAX) | 約4,500 | 約0.8秒 |
EOS (EOS) | 約4,000 | 2〜3秒 |
TRON (TRX) | 約2,000 | 最大5分 |
Ripple (XRP) | 約1,500 | 3〜5秒 |
Stellar (XLM) | 約1,000 | 約5秒 |
TPSがネットワーク手数料に与える影響
ブロックチェーンの需要がネットワークの処理能力を上回ると、ユーザーはバリデーターやマイナーに より高い手数料を支払って優先的な処理を求めるようになります。
TPSが低いネットワークでは:
- ピーク時に混雑しやすい
- 承認が遅くなる
- 手数料が急騰しやすい
TPSが高いネットワークでは:
- より多くのユーザーを同時に処理できる
- 混雑を緩和できる
- 手数料が安定しやすい
このため、ネットワークが十分にスケールできる場合、従来の決済システムよりもブロックチェーンの方が安価になるケースもあります。
TPS・スケーラビリティと「ブロックチェーン・トリレンマ」
ブロックチェーン・トリレンマとは、以下の3つの要素を高いレベルで両立させることの難しさを指します。
- スケーラビリティ
- セキュリティ
- 分散性
TPSを高めるには、しばしばトレードオフが必要です。スピードを優先するために分散性を制限したり、設計上の妥協をするプロジェクトもあれば、バランス重視でスループットが控えめな場合もあります。
各ブロックチェーンは、異なる方法でこの課題に取り組んでいます:
- SolanaはProof of HistoryとProof of Stakeのハイブリッドモデルを採用
- FantomはDAG技術で並列処理を実現
- Polygonは Layer 2ソリューションやサイドチェーンでEthereumのスケールアップを図っています
Ethereum 2.0と今後のTPS向上
Ethereumは2020年にBeacon Chainを導入し、Proof of WorkからProof of Stakeへの移行を開始しました。2022年9月の「The Merge」により、完全にPoSへと移行しています。
最終的なスケーラビリティ強化策である「シャーディング」では、ネットワークを64のセグメントに分割し、
- 大幅なTPS向上
- 混雑の緩和
- 全体的な効率の向上
が期待されています。完全実装後は、理論上Ethereumが最大100,000 TPSを処理できる可能性も示唆されています。
まとめ
仮想通貨の普及が進むなか、ブロックチェーンはますます多くのトランザクションを処理する必要があります。TPSは、その需要に応えられるかどうかを評価する重要な指標です。高いトランザクション処理能力は普及の原動力となりますが、セキュリティや分散性を犠牲にしては意味がありません。そのバランスをいかに実現するかが、ブロックチェーン開発の大きな課題となっています。
FAQ:ブロックチェーンのTPS(1秒あたりのトランザクション数)
ブロックチェーンにおけるTPSとは?
TPSは「Transactions Per Second(1秒あたりのトランザクション数)」の略で、ネットワークが1秒間に処理できるトランザクション数を示します。
TPSが高ければ高いほど良いのですか?
必ずしもそうとは限りません。TPSが高いとスケーラビリティは向上しますが、分散性やセキュリティが犠牲になる場合もあります。バランスのとれた設計が持続的な運用には重要です。
なぜBitcoinのTPSは低いのですか?
Bitcoinはスピードよりもセキュリティや分散性を重視した設計です。ブロックサイズや生成頻度に制限があるため、TPSが低くなっています。
TPSは手数料にどのような影響がありますか?
TPSが低く需要が高い場合、ユーザーはより高い手数料を支払って優先的な処理を求めます。TPSが高いネットワークは混雑を緩和し、手数料も下がりやすくなります。
ブロックチェーンを変更せずにTPSを上げることはできますか?
はい。ロールアップやサイドチェーンなどのLayer 2ソリューションを活用すれば、基盤となるLayer 1を変更せずに実質的なTPSを大幅に向上できます。
TPSが最も高いブロックチェーンは?
Solanaは主要なブロックチェーンの中でも非常に高いTPSを誇りますが、実際のパフォーマンスはネットワーク状況によって異なります。
TPSとブロックタイムの違いは?
TPSは「1秒間に何件のトランザクションを処理できるか」、ブロックタイムは「新しいブロックを生成するのにかかる時間」を示します。ブロックタイムが短くても、ブロック内に含まれるトランザクション数が少なければTPSは低くなります。
Layer 2ソリューションはTPSにどのように影響しますか?
Layer 2ソリューションは、メインのブロックチェーン外でトランザクションを処理し、まとめてオンチェーンで決済することで、基盤となるLayer 1のTPSを変えずに全体の処理能力を大幅に向上させ、スケーラビリティとセキュリティの両立を実現します。